第8話「幹部会の活用と社内コミュニケーションの強化」
A社の「攻めの営業」が本格的に動き出す中、次なる課題として浮かび上がってきたのは、社内コミュニケーションの強化だった。A社では技術者同士のやりとりが中心となりがちで、営業や経理、そして現場の技術者との情報共有が不十分だった。これではプロジェクト管理や営業戦略の実行において、意思決定が遅れる可能性がある。
そこで、小池診断士は社内の情報共有をスムーズにするため、定期的な幹部会を活用することを提案した。幹部が集まり、各部門の状況や課題を共有することで、全社的な意思統一を図るというものだ。
フォレスト中小企業診断士事務所のミーティングでは、タカシとエリカもこの計画に積極的に意見を出していた。
「A社さんのような技術系の会社では、どうしても現場と営業のコミュニケーションが取りにくくなりがちですよね。でも、幹部会を活用すれば、営業戦略と現場の意見がしっかり噛み合うようになると思います」とタカシは話す。
エリカもまた、「技術者の方々が直接参加できる場があると、全員が一つの方向を向きやすくなりますよね。私、議事録のフォーマットを作ってみました。使いやすいように工夫してみたので、皆さんで確認してください」と提案し、資料を配布した。彼女の配慮が感じられるシンプルでわかりやすいフォーマットは、すぐに採用されることとなった。
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数日後、小池診断士とタカシはA社を訪れ、幹部会の導入について説明した。社長をはじめとする幹部社員たちが集まり、小池診断士が話を切り出す。「幹部会を定期的に開くことで、各部門の情報を迅速に共有し、意思決定をスムーズに進めることができます。特に新しい営業戦略の実行には、全社的な理解と協力が不可欠です」
幹部社員の一人が質問した。「しかし、毎回幹部会を開くとなると、時間の確保が難しいのではないでしょうか?」それに対し、小池診断士は落ち着いた声で答えた。「時間の確保は確かに課題ですが、短い時間でもいいので、毎回確実に進捗を確認することが大切です。何も大がかりな会議にする必要はありません」
タカシも続けて、「議事録を簡潔にまとめることで、後から確認する際も便利になります。皆さんがエリカさんの作成したフォーマットを使えば、効率よく情報を共有できますよ」と補足した。
「それは助かりますね。新しい営業戦略も含めて、うまく情報を整理して進めていければと思います」と社長が言葉を続け、他の幹部たちもうなずいた。これで、A社は幹部会を中心に情報を集約し、効率的な意思決定ができる体制を整え始めた。
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フォレスト事務所に戻った小池診断士とタカシを、エリカが迎えた。「おかえりなさい!幹部会の話、うまくいったみたいですね」と、事務所の空気が和む。
「うん、エリカさんのフォーマットのおかげで、皆さんにも理解してもらえたよ。情報共有がしやすくなって、幹部会の重要性をしっかり感じてもらえたみたいだ」と小池診断士が報告すると、エリカは少し照れくさそうに微笑んだ。
「それは良かったです。A社さんが前向きに取り組んでくれるのを聞くと、私も本当に嬉しいです」とエリカが答えると、タカシも「本当に。これでA社さんも、プロジェクト管理がよりスムーズになるはずです」と付け加えた。
幹部会の導入により、A社の社内コミュニケーションは次第に改善されつつあった。各部門が同じ目標に向かって協力し合える環境が整い、新しい営業戦略もスムーズに進められるようになっていく。フォレスト中小企業診断士事務所の支援は、チームの協力と工夫によって、A社を着実に変えていった。
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経営改善の着眼点と支援のポイント
-幹部会の導入:各部門の情報を共有する場として、定期的な幹部会を開催し、意思決定の効率化を図る。
-簡潔な議事録の活用:エリカが作成したシンプルなフォーマットを使用し、議事録を簡潔にまとめて情報共有を促進。
-全社的な協力体制の強化:幹部会を通じて、営業戦略やプロジェクト管理における全社的な理解と協力を促進。
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