第9話「外部協力先との連携と資金計画 - さらなる成長の準備」
A社の「攻めの営業」が実を結び、受注が増えたことは喜ばしいニュースだったが、製造現場ではキャパシティの限界が見えてきた。これに対応するためには、内部での生産効率の向上と同時に、外部の協力先を見つけて補完する体制も検討する必要がある。フォレスト中小企業診断士事務所では、A社が直面するこの新たな課題に向けた対策を練るため、小池診断士、タカシ、エリカが集まり、解決策のアイデアを出し合っていた。
「短期間で現場の生産能力を一気に増やすのは難しいですし、現場だけで完結させようとすると、受注増に対応できなくなる恐れがありますね」と小池診断士が言うと、タカシが深く頷きながら意見を述べた。「そうですね。A社さんの技術力は外部にも評価されていますから、協力企業を探して一部の製造工程をアウトソーシングすることも検討すべきかと」
「それなら、信頼できる協力先のリストを作成してみてはどうでしょう?」とエリカが提案した。彼女は早速、A社のニーズに合いそうな協力先の候補をまとめ、連携が円滑に進むようサポートする準備を進めることにした。エリカの気配りによって、事務所全体が一丸となってA社の次なる一手を支える道筋が見え始めた。
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その数日後、小池診断士とタカシは、A社の社長と共に協力先候補の企業を訪ねるため、いくつかの企業を回ることになった。最初の訪問先は、以前から小ロットの試作品を専門に製造している会社で、A社と同じく精密部品を扱う技術力を持っている。現場を見学させてもらうと、最新の機械設備が並び、工程管理もきちんとされている様子が伝わってきた。
社長は緊張した様子だったが、小池診断士が「こちらの技術であれば、A社さんのクオリティ基準に十分対応できると思います」と背中を押すと、少しずつ表情が和らぎ始めた。「確かに、我が社だけでなく協力先を活用できれば、安定した納品ができそうです」と社長も納得したように頷く。
さらに、別の協力先候補として訪れたのは、中規模の部品メーカーで、医療機器や航空分野の部品も手がけている会社だった。担当者はA社の技術力に興味津々で、「こちらの案件に関われるなら、ぜひお手伝いしたいです」と意欲を見せた。これに対し、タカシが「A社の製造基準をしっかりお伝えし、品質管理を徹底してもらえるなら、お互いに良い関係が築けると思います」と提案すると、先方も快く賛同してくれた。
こうしていくつかの候補先を訪問した結果、複数の企業が協力を前向きに検討する姿勢を示してくれた。A社の社長も、「受注が増えていく中で、こうした協力先の存在は大変心強いですね」と話し、製造体制の強化に手ごたえを感じ始めている様子だった。
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その日の夕方、フォレスト事務所に戻った小池診断士とタカシをエリカが出迎えた。「お帰りなさい!協力先の手応え、いかがでしたか?」
「うまくいったよ、エリカさんのおかげで、信頼できそうな協力先も見つかりそうだ」とタカシが笑顔で答えると、エリカもほっとした様子で頷いた。エリカは、協力先リストの更新と合わせて、取引条件や進捗を管理できるテンプレートも準備しており、「これを使えば、A社さんも協力先との取引がスムーズに進むと思います」と話した。
小池診断士は改めて、チームとしての支援の力強さを感じていた。「ありがとう、エリカさん。このリストとテンプレートがあれば、A社さんも安心して外部協力先を活用できるね。僕たちの支援が、企業の成長を支える具体的な成果につながっているのは嬉しいことだ」
こうして、A社は内部の効率化だけでなく、信頼できる外部協力先を確保することで、受注増加に対応できる柔軟な生産体制を整えつつあった。この連携体制によって、今後も着実に製造体制を強化しながら、さらなる成長を目指すための準備が整いつつある。
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翌週、A社では協力先を巻き込んだ生産計画の再調整が行われ、各プロジェクトごとの負荷とスケジュールが細かく見直されていった。製造キャパシティを補う新体制が社内外で整備されていく中、社員たちの間には安心感と新たな挑戦に向けた意気込みが生まれていた。これにより、納期遅延のリスクが減り、安定的に顧客対応ができる体制が構築されつつあった。
こうしてA社の製造と営業の体制は、これまで以上に盤石なものになりつつあった。フォレスト中小企業診断士事務所は、事務所全体で連携しながら、A社の成長の礎を共に築き上げていることを実感していた。
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経営改善の着眼点と支援のポイント
-外部協力先の有効活用:試作や特定工程のアウトソーシングを検討し、柔軟な製造キャパシティを確保することで生産体制を強化。
-資金計画の再構築:外部委託に伴う費用を計画に盛り込み、安定的な資金繰りを確保。
-連携と進捗管理の見える化:リストと進捗管理テンプレートを活用し、スムーズな取引と協力体制を実現。
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