みなさん、こんにちは!
フォレストファームの大川です。
前回、前々回と、金融機関が日々行っている企業の財務分析と格付けの概要や仕組みについてお話をしてきました。最終回の今回は、いよいよ格付けランクアップのポイントを、主要な経営指標を参考にしながらご紹介します。
格付けが上がると、資金調達力(ここでは融資を受けること)が向上するだけでなく、金利の交渉を有利に進めることも期待できます。
この投稿が、企業の皆さまの財務内容を見つめる機会になれば幸いです。
1.「収益性分析」から見る経営指標
売上高に対して、どれくらいの割合で利益が出ているかを表す指標です。
もちろん、以下3つの指標は比率が高いほど収益性は良好で、格付けの評価も上がります。
業種ごとに目安となる比率は異なるので、以下、日本政策金融公庫が公表している「小企業の経営指標調査」を参考に、まずは優良企業(資料の中では「黒字かつ自己資本プラス企業」と記されています)の平均値を目指しましょう。
【表1】
2.「安全性分析」から見る経営指標
短期的な支払能力や純資産の状況など、資金の余力や企業の体力を表す指標です。
一般的には、以下2つの指標も比率が高いほど安全性は良好で、格付けの評価も上がります。
流動比率が100%を下回る(流動資産よりも流動負債が大きい)場合や、自己資本比率がマイナス(純資産がマイナスのいわゆる債務超過)の状態は、経営の危険性が高いため、格付けの低下に大きく影響を及ぼします。
【表2】
3.「成長性分析」から見る経営指標
売上や利益の増加率(減少率)を表す指標です。
こちらも、増加率が高いほど良好ですが、売上高の急激な増加は資金繰りに支障をきたす場
合があるので、段階的かつ適正な増加(率)が、格付け評価アップのポイントです。
また、売上高の増加に対して、利益が減少している場合などは、コストの増加が成長を妨げ
ていることが懸念されるので、格付け評価アップに繋がりません。
売上と利益のバランスのよい増加(率)が必要になります。
【表3】
4.金融機関が最も重要視している経営指標
金融機関からの借入金(有利子負債)の返済能力を表す指標です。
減価償却前経常利益(一般的にはキャッシュフローとも呼ばれます)は大きいほど資金余力が認められ、格付けの高評価を得られます。この、減価償却前経常利益が、借入金の年間返済額を上回っていると、資金繰りに余裕が生まれます。
また、債務償還年数は短いほど返済能力が高く、10年以内が優良企業の目安となります。
10年超20年以内の企業は、財務内容にやや不安があり、20年を超えると経営の危険性が高いと評価されます。格付けも低いランクに位置付けられ、資金調達が難しくなります。
※上記の年数はあくまで目安ですので、資産状況等により判断基準は変わる場合があります。
【表4】
5.定性要因は最後の決め手
上記1~4は、財務内容に基づいて評価される定量的な要因分析ですが、その企業にしか持っていない、決算書では見えない経営力を評価する手法として、定性要因分析があります。
格付けランクの境界線上に位置する場合などは、差別化戦略となりうるこの定性要因がワンランク上の格付けを取得するための最後の決め手になります。
【表5】
以上が、格付けランクアップのポイントになります。他にも重要な経営指標はたくさんありますが、ぜひ見ていただきたいものに絞ってご紹介しました。
シリーズ第1弾の冒頭でもお話したとおり、格付けのランクアップとは、企業の信用力を高めることであり、資金調達力に直結しています。
自社の経営指標を算出してみたり、同業種・同規模の事業者の経営指標と比較することで、現在の立ち位置や、今後改善すべき内容も見えてくると思います。
企業の皆さまがより高い格付けを取得されて、事業拡大に繋がる資金調達が実現することを心より願っています。この度もご拝読ありがとうございました。
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